社会福祉法人 北海道社会事業協会 余市病院

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【2014/8】第2回佐久国際保健セミナー / Saku Global Health Seminar 2014

海外の活動

2014年8月2日・3日、佐久総合病院国際保健委員会主催の第2回佐久国際保健セミナーに参加しました。医療従事者、学生を始めとして様々な職種の方、60名の参加がありました。1回の募集で十分な人数が集まったようです。土日、半日ずつのセミナーで、テーマは「日本と世界で地域の健康を守る人を育てる」でした。国際保健のレクチャー2題(30分)、地域医療のレクチャー2題(30分)、また、海外及び日本のシナリオを提供し、地域の問題に対して解決策を探るグループワークが一つありました。僕は最初のショートスピーチで余市の紹介をしました。レクチャー4題は海外、国内の講義ともに「人を育てる」「コミュニティとの関わり」をメインとする話の展開でした。

国際保健のレクチャー1題目は、大阪大学・中村安秀教授による「健康はコミュニティで守る-インドネシアののプライマリヘルスケアの事例から-」で、プライマリヘルスケアのポイントと海外と日本の地域を対比させながらの分かりやすいレクチャーでした。2題目は千葉科学大学・大澤文護教授による「フィリピン大学レイテ分校の挑戦と課題」で、佐久との関わりの深いレイテ分校の成功、困難例についての講義でした。
日本の地域医療のレクチャーは佐久総合病院・松島松翠名誉院長による「地域健康づくり員(衛生指導員)とその役割」で、歴史のある佐久の地域医療の土台を作った松島先生の衛生指導員に重点を置いたレクチャー、正にコミュニティに入り、人を育てることに取り組んだ佐久の歴史のお話です。2日目は石巻市立病院開成仮診療所・長純一先生による「石巻市の被災者支援の取り組み、在宅ケアから地域包括ケアへ」と題したレクチャーがあり、被災地の課題、これまでの取り組み、喫緊の課題をプライマリヘルスケアに重点を置き講義が行われました。

余市病院

グループワークは海外の地域(ザンビア、ネパール)、佐久での地域の厳しい事情、詳細の文書が配られ、それを基に問題点の抽出、カテゴリー整理を行い、その上で解決策を探るというグループワークの設定でした。ある程度ランダムにグループが作られており、ディスカッションしながら皆で解決策を探るものです。

余市病院

僕らはザンビアグループでした。ザンビアの田舎では、産業に乏しくお金が無く、人がいない、感染症問題、生活習慣病、周産期死亡率も高い、そのような場所に5年間で1億円の予算を与えられたNGOががどのように介入していくのかというストーリーでした。僕らのグループは農業、畜産の産業の上に医療、教育を積み上げていくという方法でプレゼンをしました。
面白い、密度の濃い2日間でした。実質半日×2日で分刻みの過密なスケジュールを回すべく、見たところ10人程度のスタッフ(佐久総合病院の職員)がフルに活動をしていました。今回のセミナー主催の主体は、佐久総合病院内に作った国際保健委員会というボランティア参加の職員がメインのようです。活動したくて参加しているためか、皆さんが活き活きと動き回っている姿が印象的でした。
オプショナルツアーでは、佐久総合病院、佐久医療センター及び診療所の見学ができます。残念ながら時間の問題で診療所まで見る余裕がなかったです。特に佐久総合病院では歴史と文化を感じ、若月イズムが至るところにありました。素晴らしく、圧巻でした。

僕が今回、佐久で感じたこと、印象に残ったことは大きく5点でした。
1)プライマリヘルスケアでやるべきこと(おそらく国内外)はこの20年変わっていない。
2)人材育成、コミュニティ作り、継続性
3)医療・保健・福祉のバランス
4)グループワークで得られるもの、有効性
5)住民のニーズの捉え方

1)20年前、WHOから出たプライマリヘルスケアの概念を超えるものはまだ出てきていないという中村先生のお話は驚きました。日本でも途上国でも、プライマリヘルスケアの視点からやることのベースは変わらない。また、インフラが崩壊した日本の地域、例えば被災地では途上国での経験を十分に活かすことができる。ただ、今後のキーワードとしては、インターネット、頻繁な人の行き来とのことでした。
2)地域に人がいないから、呼んでくるでは継続性がなく、その場所で人を育てないといけない。コミュニティの力が問われます。大小の違いはありますが、余市が抱えている問題も同じだと思います。継続性は難しい問題です。フィリピン、レイテ分校、佐久の例、それぞれの例を見て、色々なテクニックはあるのかもしれないけど、結局は愛着を持ってその土地に入り、そこで暮らし、少しずつ信頼関係を持って変えていくことでしか、継続性は作れないと感じました。愛着を持つために、長くいるために、地域に入る活動をする、フィリピンのレイテ分校の方法の一つだと思います。地域でプライドを持って働く人材を育てる。余市で活動する上でのヒントになりました。
3)被災地に入り、現場で活躍されている長先生のレクチャーは迫力がありました。コミュニティを支え、プライマリヘルスケア、地域の取組みに最大限の力を注ぐ長先生は揺るがない迫力を感じます。レクチャーを聞いていて、強い共感と違和感がありました。医療・保健・福祉のバランス、役割分担、地域の中でどう折り合いをつけるかが大切ですね。
4)レクチャー(受動的)、グループワーク(能動的)を上手に組み合わせて、達成度を上げる。「人を育てる」をテーマに上手にコーディネートされていました。半日でこの内容を消化するのは凄いです。
個人的にはシナリオ解決型のグループワークの達成度について、以前から疑念を持っています。今回も知らない場所の知らないセッティングを話し合うことの難しさを感じました。グループワークにかける時間に対して、得られるものは思いのほか少ないと感じます。グループワークで、現実の世界の感触を伝えるため、現場で活躍しているスタッフにグループワーク前後にレクチャーをお願いする、and/or 現場の視察があると良いと思いました。ある程度活動したフィールドについて、その介入とOutcomeを情熱を持って解説をすると、想像の世界を実際の現実に落とし込むことができるのかもしれません。もしくは、田舎の現状を視察、地域の人と交流をした上で、それをテーマにグループワークがあると面白いと思いました。
5)住民のニーズがある部分での介入は効果を上げやすい一方で、ニーズが見えにくい部分でどう入るかは、専門家であっても、人によって捌き方が違うようです。例えば、生活習慣病は国内外で喫緊の課題であるものの、ニーズとしては上がりにくいため、優先度が低くなる。大切なものをニーズとして気付かせるものは文化への不自然な介入にもなるように思います。コミュニティを外部から形成するものは、不自然な介入ではないのか。Outcome設定期間を長くすること、時間を掛けて地域に入ること、しかし自分の中では違和感が残ります。
色々学ぶことが多い2日間で、素晴らしいセミナーでした。スタッフの皆さま、ありがとうございました。

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